報告者はこれまでの研究を踏まえた上で、平成19年度において、新たに行った調査は下記の通りである。1、日本における中国新移民の音楽に関する調査。2、中国伝統音楽南音に関する文献調査。3、日本の中華街の活性化と地域文化に関ずる調査。 1、越境する伝統文化の受容・変容という視点から、最近、日本に興った中国民族楽器二胡のブームについて調査を行った。近年以来、日本の各地に中国民族楽器二胡の学校が雨後の筍のように現れて、その教師の多くは中国からの新移民であり、プロの音楽家である。移住先の日本人の社会に広がっている中国新移民による民族楽器二胡の伝承は、越境する文化の伝播と変容の1つモテルとして捉えられるのであろう。 2、中国の伝統音楽「南音」は悠久的歴史を持ち、中国福建省南の地域だけではなく、台湾、及び東南アジアなど、閲南出身の華人が居住する地域にも広く伝わっている。報告者は現地調査と文献調査を通して、南音の歴史源流、音楽構成、及び演奏形態と楽器、南音の伝承形態、南音の民俗とその社会的な役割、及び海外華人と南音について明らかにした。 3、中華街における新たな調査によって、観光人類学の視点を用い、観光と地域文化との関係を考した。特に、その比較として、大阪のアメリカ村を取り上げ、街の魅力を構成する次元に関する質的考察を行った。調査をとおして、異文化を活用する地域文化生成のメカニズムをより対照化、明確化することができた。
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