研究課題
基盤研究(C)
本研究においては、主としてマレーシアを対象にイスラームと市民的価値との「整合」に関する資料収集を行い、現代国家におけるイスラームの制度化について考察した。具体的には、(1)イスラーム教義上の棄教とマレーシア憲法が保障する宗教の自由との関係、(2)イスラーム教義上容認されている多妻婚の取り扱いの二点について、とくに法制度面から検討することで、二つの価値の「整合」をあきらかにすることを試みた。資料収集活動として、マラヤ大学、マレーシア国民大学、マレーシア国立図書館等において、マレーシア各州のイスラーム関連条例(マレーシアではイスラームは州の権限の下に置かれている)を変遷(改正)過程も含めて精査するとともに、イスラームからの棄教が争われた裁判記録(判例)もあわせて確認した。また棄教と多妻婚についてのマレーシア各界、各層の言説を、文献調査および聞き取り調査によって収集した。シンガポール、タイにおいても比較研究のための資料収集を補足的に行った。資料の分析から次のことがあきらかになった。(1)イスラームを市民的価値との関係においてどのように制度化するかについては、様々な見解がときに相争うような形で競合している。このことから現代世界におけるイスラーム(ムスリム)の「多様性」が具体的に確認された。(2)イスラーム的価値を強調する者も市民的価値を強調する者もそれを制度化するさいにはたがいに相手の価値の存在を考慮せざるを得ない。その意味でイスラームと市民的価値の「整合」とは、つねにそれぞれの価値が相対化されつつ具体化される過程であることが実証的に確認された。研究成果は年度ごとに研究論文として発表した。
すべて 2008 2007 2006
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
人文研究(大阪市立大学木学院文学研究科紀要) 59巻
ページ: 140-153
Jinbun-Kenkyu (Bulletin of the Graduate School of Literature and Human ciences) 59
人文研究(大阪市立大学木学院文学研究科紀要) 58巻
ページ: 212-226
Jinbun-Kenkyu (Bulletin of the Graduate School of Literature and Human Sciences) 58
青山亨編『東南アジアにおけるイスラームの現在(南太平洋海域調査研究報告(鹿児島大学))』 43号
ページ: 15-27
Aoyama Tow (ed.) Islam in Contemporary Southeast Asia, Occasional Papers, No43, (Kagoshima University Research Center for the Pacific Islands)