本研究は、大分県南海部郡米水津村、山口県下関市吉母浦、広島県豊田郡豊町大崎下島、宮城県牡鹿郡女川町江ノ島、秋田県男鹿市北浦の5漁村地区を調査対象として、漁民家族とりわけ漁民とその妻の日常行為を通して、漁業の活動に、民俗主体(伝承主体)である漁民や漁民家族がどのような様態で係わり、その地域の民俗形成や変容に関与してきたかを、ライフヒストリーや家族誌的記述など、サンプリングした漁民家族と密着した中で成果があげられる微視的方法を用いることにより、解明していくことを目的としている。 本年度は、研究期間(平成17年度〜平静19年度)の初年度に当たり、当初申請していた経費の削減もあり、対象の5地区を3地区(米水津、江ノ島、吉母浦)にしぼりこみ、それぞれ以下の日程で調査を実施した。 大分県南海部郡米水津村 8月2日〜8月13日、12月27日〜12月31日 宮城県牡鹿郡女川町江ノ島 8月17日〜8月27日 山口県下関市吉母浦 8月30日〜9月5日 それぞれの地区において、漁業の現況と変遷、漁民家族へのライフヒストリーの聞き書き、地区に関する浦方文書の閲覧などの調査を実施してきた。本年度は、これら3地区の概況把握につとめた。例えば、このうち江ノ島では、島長(区長)より、島の漁業の現況と変遷、女川原発設置前後の島民の行動(補償金による居宅の女川町への移住と、その前後の島周辺での漁業の変化など)、高齢化が進捗する島での相互扶助の体制など、漁民社会をとりまく現代的課題について貴重な話を聞くことができた。 次年度以降は、本年度の調査結果を基礎として、地域の民俗形成と深く係わる漁民家族への微視的調査研究を続行し、深化をはかる予定である。
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