研究概要 |
本年度は、少子高齢化時代にいかなる生き方のヴァリエーションがローカルに模索されているのか、ライフデザインに関しどのような分析基盤を提供できるのか、文化人類学の応用可能性に関して考察を深めた。たとえば、「ノーマライゼーシヨン」という語が実践においていかに解釈されているか、近年の親族研究における議論「食物を分かち合い共に暮らすという毎日を積み重ねることで紡がれるより広い人と人との関係性("relatedness")」[Carsten 2000]などを検討し、ローカルな場で豊かな生を求める人々が構築しうる関係性について考察した。 1.基礎的資料の収集 1)少子化傾向が縮小しているデンマーク、多文化主義の実践を続けるカナダを中心に統計および基本文献を収集。 2)親族・人間関係性に関する文献資料の収集(Carsten, J., (ed), Culture of Relatedness. 2000.など)。 2.研究調査 バンクーバー市で日系の高齢者施設がいかにデザインされたのかを調査した。高齢者ケア施設が、高齢者用一般住居および日系博物館と共に建設され、「日本文化」に関心を抱く人々の交流の要となる現状について情報収集した。また「日本文化」に関する活動を通して交流する場としての"Tonari Gumi"について調査した。 3.第2回研究経過報告会(平成18年11月23日於京都文教大学) テーマ:「少子高齢時代におけるライフデザインへの文化人類学的貢献に向けて」小林香代「『まちおこし』の実践に働く構造的拘束-否認される『政治性』、隠蔽される『政治性』」;田中真砂子「年齢階梯的社会が少子化(+嫁不足)の波に襲われるとき-三重県菅島の場合」;山田千香子「離島における出産」;洪賢秀「韓国社会における海外養子のイメージ」;鈴木七美「トロントの日系高齢者施設における試み」 4.学会発表(平成18年10月13日)カナダ日本学会(於Thompson Rivers University) "An attempt to establish a new home for elderly Japanese Canadians and Nikkei groups in Toronto" 5.少子高齢化時代のライフデザインに関わり、「医療・身体論」『文化人類学20の理論』を執筆。
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