1研究の概要 今年度も吹田市千里山住宅地を中心にフィールドワークを実施した。新しく開発当初に作成された図面を発見し、既存の図面と比較することで、さらに具体的な変容を把握することができた。また昭和10年代に建築された住宅の調査を実施し、田園都市として開発された最後の住まいの状況を知ることができた。 2成果 (1)住宅地の売り出し当初の図面を検証した結果、開発から売り出しまでの約2年間に、急ピッチで住宅地の整備工事が進められ、住宅の建設も短期間に行われたことがわかる。 (2)当初の計画では住宅地の中央にロータリーと緑地公園を建設することになっており、それらを田園都市の重要なイメージと位置付けていたようであるが、住宅会社の経営が不調になるにつれて、前者は縮小、後者は中止になったことが明らかになった。 (3)住宅地の新住民は、西洋風の街の景観は受容したが、自分の住まいのなかで展開する生活の様式は和風を選択した。その結果、西洋風の街に主として日本風の住まいが建設された。ただし、住まいの外観には和洋折衷の様式を採用するものもみられる。 (4)昭和10年代の後半からは社会情勢に抗することなく、神社で出征兵士の武運長久が祈願されるなど、他の地域と同様の光景が見られた。すなわち田園都市としての発展はなく、普通の街になったといえる。
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