今年度は、考古関係で、近世から近代の「港区芝雑魚場跡」遺跡という、この科研で最も重要なターゲットとしたアオヤギ(和名:バカガイ)の貝剥き跡を発見できたという大きな成果を上げることができた。ここは、2mにも達するバカガイがほとんどを占める大規模な貝塚である。その中には、僅かにアカガイ等を含み、アカガイは底曳網で得られたと想定され、貝剥きの貝類採集の方法も検討できそうである。その土壌サンプルを、港区教育委員会の配慮で採取することができたので、次年度以降、その解析を行っていく予定である。また、この「港区芝雑魚場跡」は近世から近代の遺跡でありながら、古文書等の文献史料には一切触れられておらず、文献と遺跡の対応は必ずしも一致しないことを明瞭に示すこともできた。同じく考古学関係では、縄文時代・中世・近世と東京湾とその周辺の遺跡の魚介類の情報を収集し、貝剥きの起源と展開に関しての情報を正確に押さえていく作業を行っている。生物分野では、東京湾の人工海浜での貝類の生態調査を継続中である。文献史学では、様々な文書を収集し、その一つについては、史料紹介を行った。民俗分野では、現在の貝剥きの聞き取りを継続している。
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