研究課題
基盤研究(C)
研究史の検討を行ない、11世紀後半の「教皇革命論」、「中世的法観念」をめぐる議論から出発して中世法の妥当構造を「法的諸慣習」という概念でとらえる考え方、いわゆる紛争解決論、そして中世の政治における儀礼や演出を重視する考え方の相互の意味と、12世紀の法構造の変動を理解するためにそれらが用いる意味について整理し、これらの新しい考え方が、リジッドな近代的法概念に基づく法史研究から脱却するための重要な出発点となることを確認した。この研究史の分析を受けて、王権を中心とする法構造の変動を理解するための前提となる、(観念形態をも含む)ライヒの構造の変動を、貴族と王権の関係という視角から分析した。とりわけ、シュタウフェン期において、一面においては国王支配の基盤が狭隘化するという現象が、同時に王権の個別貴族(の同意)からの相対的自立化をもたらすという側面があることを明らかにし、このことが、王権の行為形式の高権化、「寛容」から「法の厳守」へという国王イデオロギーの変化の背景にあると考えた。次に、中世中期の法を考える際に重要な位置を占めるラントフリーデに関しては、「合意」の中に存在する法という、中世法の存在構造に関する最近の論を前提として、その法的意味を、近代法的な意味での法テキストの「妥当」という観念から離れて理解すべき事を主張した。更に国王の裁判権とその実務の発展を、オットーネン期からシュタウファー期にかけて追跡し、古い法構造を一部で維持しながら、同時に新しい高権的な裁判のあり方、王の意思の貫徹を可能にした制度的な発展を追跡した。これらの研究によって、とりわけ王権と法との関係を、王権と貴族層との関係の変化という視点から分析する具体的な手推かりが得られたように思う。
すべて 2007 2005
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 1件)
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