研究課題/領域番号 |
17530005
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
南方 暁 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (70125805)
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研究分担者 |
鶴巻 克恕 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (90377169)
田巻 帝子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 助教 (80251784)
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キーワード | 家事紛争 / 人事訴訟 / 家事調停 / mediation / ADR / 家庭裁判所 / 家事調停委員 / 日英比較 |
研究概要 |
1. 家庭裁判所のある日本とfamily divisionはあっても特別の家事手続をもたない英国とは、家族紛争に対する司法の対応が異なるはずであるが、人事訴訟関係の議論について言えば、両国とも同じような課題を抱えており、それに対する対応が問われている現状にある。 2. 日本における人事訴訟事件の大半を占める離婚事件では、夫婦財産の扱いや子どもの処遇をめぐって新たな制度のもとで運用がなされているが、一方では家事事件の特殊な性質から非対審構造的対応が求められ、他方では当事者の公平や正義の実現からは訴訟の特性を活かした対応も必要とされることになり、そのバランスをどうとるかが問われる。鶴巻論文で指摘されているように、訴訟前に強制される調停と訴訟との関係をどのようにとらえるべきなのか、また、適正手続きなどの視点から調停の特性と訴訟の特性をどのように活かすことができるのかなどについては、まだまだ結論が出ているわけではない。また、離婚訴訟では附帯処分とされる子の監護や親権についての処理について、離婚事件の当事者的地位にある子どもの法的保護は、調停においても訴訟においても十分とは言いがたく、家事紛争を総体として処理できる家庭裁判所という仕組みの活用について議論の余地がある。いわゆる「後見的」対応と当事者主義的原則との折り合いをどのようにつけて、子の保護を図るかについてまだ議論は深まっていない。 3. 英国では、単独の人事訴訟手続法はないが、離婚当事者の間で財産形成などが争点になった場合には、公平や正義の視点にたって、当事者に法的保護を図るという運用が、判例によって展開されてきた。英国での合意形成援助(mediation)の果たす役割には限界があるので、訴訟という場において当事者の公平な保護が図られてきた。ただ、こうした対応は、法律家が通常関与する仕組みが整備されているから可能になったとも言える。
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