研究課題
基盤研究(C)
●新人事訴訟法の制定によって人事訴訟事件、その中でも最も多い離婚事件は、離婚調停から離婚訴訟まで家庭裁判所で一括して処理されることになった。改正前よりも当事者にとって負担が軽減されたことは好ましい。しかし、新たな人事訴訟手続は理論的にも実務的にも問題をもたらした。●本研究で問題としたのは、第一に、調停手続と訴訟手続の連動と遮断の点である。人事訴訟といっても当事者の権利義務の保障がなされなくてはならない。しかし、調停と訴訟の関係をめぐっては、担当する裁判官をめぐる点、活用できる情報の扱いなど、当事者の手続的保障が十分とは言いがたい現状にある。●イギリスでは、家事事件はすべて人事訴訟で処理されることになっている。しかし、現実には特別手続が簡易な手続で紛争に決着をつけることが出来るようになっている。ただ、当事者が合意によって処理する場と司法の場は手続き的には遮断されており、また、合意を重視するプロセスも最終的には裁判官の関与によって当事者(子どもを含む)に法的正義が保障される仕組みがある。●さらに、離婚事件のように子どもを含むものは、司法判断に人間関係の専門家を関与させたり、司法の決着後のフォローの仕組みも現実には動いており、公的機関と私的機関の協働もイギリスには見られる。●日本の家庭裁判所は専門性を活かせる組織となっており、司法機関以外の機関との協働を今後どのように発展させるかが課題となっている。
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