研究課題
基盤研究(C)
第一に、フランス民法典のうち特に特徴的な序章を対象として分析を行った。その結果、従来法律中心主義の新しい法制度の枠組みを設定するものと考えられてきた第一条から第六条の規定が、「裁判」「裁判所」の観点から考察すると、むしろ古法からの連続性を確保する仕掛けと考えられ、ここで保存され、法典によって《隠蔽》された裁判官の役割は、EU統合等に伴う近時の国家枠組みの動揺に伴って再び顕在化している、という興味深い現象が観察される。第二に、法典編纂における「立法者」の役割と観念について、古代ギリシア・ローマ以来の観念との連続面が明らかになった。すなわち、古代ギリシアの立法者ソロンにはじまり、ローマのユスティニアヌス帝を経て、フランス民法典のナポレオンまで続く伝統である。従来、フランス民法典は、理性(自然法)の産物であるとしてその点に妥当性・正統性の根拠が求められるかたちで多くの説明がなされてきた。ナポレオンの強力な指導力が指摘されても、それが古代以来継承された「立法者」観念との関係で論じられることはなかった。本研究では卓越した立法者(法典編纂者ではない)が与えたことを正統性の根拠とする論理を民法典の中に探り、旧制を通じ古代にまで到る連続性の側面を考察した。第三に、わが国の民法典はBGBに倣ってパンデクテン方式を採用したため、「インスティトゥーツィオーネス(提要)方式」を採るフランス民法典は法の体系としては注目されなかった。しかし近時日本を含む各国の民法典の現代化と再編が試みられる中で、「人の法」を冒頭におくローマ法以来の提要方式が再び注目されている(広中俊雄『民法綱要』)。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (15件)
法政理論(新潟大学法学会) 39巻4号
ページ: 209-224
法制史研究(法制史学会)(創文社) 56号
法のうまれるとき(林信夫・新田一郎(編))(創文社) (印刷中)
Precedent in comparative law, Bruylant (Ewoud Hondius, ed) (to be published)
Code de Commerce, 1807-2007, Dalloz (to be published)
200 years of the Civil Code(Ichiro Kitamura (ed.))(Yuhikaku)
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Hosei Riron (Niigata University) vol.39-4
When the law is born(Nobuo Hayashi, Ichiro Nitta (ed.))(Sobunsha) (to be published)
Precedent in comparative law(Ewoud Hondius, ed)(Bruylant) (to be published)
Code de Commerce, 1807-2007 (Dalloz) (to be published)
フランス民法典の200年(北村一郎編)(有斐閣)
ページ: 109-140
Jurisconsultus『ジュリスコンサルタス』(関東学院大学法学研究所) 15号
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Legal History Review (Hoseishi Kenkyu) vol.56
Jurisconsultus (University of Kanto Gakuin) vol.15