17年度は本研究課題の初年度にあたり、国内外の研究文献とフランス革命期の議会でのルイ16世の裁判を中心とした一次史料の収集を精力的におこなった。フランスではパリ大学図書館所蔵の学位論文などのほかに、最新の国王裁判関連の研究文献をあつめることができ、フランス国立図書館および国立公文書館でも一次史料を閲覧・収集した。そのなかで、重要な資料としては、1792年から1793年にかけて議会の外でも出された国王裁判についてのパンフレット類をあげることができる。従来、わが国の国王裁判研究では国民公会でのロベスピエールやサン=ジュストの演説はArchives Parlementairesなどを通じて知られていたが、今回、オランプ・ド・グージュやネッケルなどをはじめとして、多数の議会の外で出された文書を収集することができ、国王裁判をめぐっての言説の戦いを総合的、立体的に解明する基盤を整えることができた。とくに、ルイ16世から弁護人として当初、指名されていて、高齢等の理由で固辞していた弁護士タルジェのパンフレットも存在することがわかり、じつは、政治的な日和見主義者と評されることのあったタルジェは、アンシャン・レジーム期の伝統的な弁論方法である書面による弁護活動をおこなっていて、革命後の陪審制度が採用された近代的な刑事裁判システムへの移行形態の弁論手法が見られることが判明した。来年度以降は、さらに政治裁判の法制史の概要を明らかにしつつ、その典型例である革命期の国王裁判の細部にまで踏み込んで実証的な成果をあげたいと考えている。
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