研究概要 |
1 本研究の基礎となるのはいうまでもなくウァフェーデ文書であるため、関係研究文献の収集の他に、とりわけ、ウァフェーデ文書史料(刊行および未刊行)の探索・収集に力を注いだ。とくに海外調査では、ドイツ、フライブルク市文書館において、1,414通のウァフェーデ誓約証書(ウァフェーデ誓約者本人が1人称の文体で書き記した証書)が所蔵されていることを確認することができた。これら証書の解読によって、次年度以降、15世紀から16世紀にかけてのドイツ刑事司法史の変革の研究を、具体的な都市を中心にして、進展させる上で大きな見通しが得られた。 2 本年度の研究の成果の一部は、小山貞夫教授古稀記念論文集『西洋法制史学の現在』(2006・創文社)の中に収めた拙稿「ドイツ中世後期ウァフェーデ研究序説--文書と事例--」で発表した(現在印刷中・全145頁)。ここでとくに明らかにしたことは、これまでウァフェーデ研究において研究の手薄な部分であった2点、すなわち(1)ウァフェーデ関係諸文書のありかた、(2)ウァフェーデ初期史(13世紀)である。ついで(3)14世紀、15世紀南ドイツ、ネルトリンゲン市において同市民等が誓ったウァフェーデの現象の実態を解明した。とくに16世紀前期との関連でいえば、ウァフェーデ破約の事例、しかも同一人物が2回3回とウァフェーデを破った事例が頻繁に見られた。ここから分かるのは、破約を繰り返し悔い改めさせるという、中世伝統の考え方が依然として活きていることである。しかし他方で、繰り返し誓約させることには、市民に対する都市司直の権力志向が出現してきている。
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