本研究は、江戸幕府の刑事司法における捜査、犯罪事実の認定手続に焦点をあてて、江戸幕府刑事手続の積極面を明らかにするとともに、そこに見られた問題点をも明らかにすること、そしてその両者の内的関連を明らかにすることを目的としたものである。昨年度は研究の第一年度であるので、基本史料の調査・収集に重点を置いた。本年度は基本史料を補充するいくつかの未刊史料、既刊史料を調査・収集(東京大学、国立国会図書館、内閣文庫、伊豆韮山郷土資料館)するとともに、収集した史料の解読作業を併行して進めた。また、これまであまり十分に調査できていなかった地方の幕府直轄領の刑事手続に関する未刊、既刊の史料についても調査し、若干のものを収集できた(長崎、伊豆韮山など)。刊本史料は比較的スムースに読み込めているが、未刊史料(古文書)の解読作業は今年も難航しており、予想したようにはスムーズに進捗していない。とはいえ、作業は一定の前進を見せており、少しつつ近世社会の刑事手続の実態が明らかになりつつある。その成果の一端は、2006年7月16日の刑事司法研究会(於:コープイン・京都)で報告させていただいた。まだまだ未解明の部分が少なくないので、この報告をさらに補充していくことが今後の課題である。地方の刑事事件のうち少なからぬ部分は、その刑事処分について地方から中央に伺い、中央の指示を仰ぐので、地方と中央の双方から刑事手続の実態についてアプローチできればと思っている
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