本研究は、個人情報保護における非権力的手法の活用可能性とその限界について、比較法的検討を加え、もって日本における今後の立法論及び解釈論の発展に寄与しようとするものである。 その第一段階として、これまで主としてドイツにおける「データ保護の現代化」論について検討を行ってきた。前年度までに行った関連資料の収集及びその分析を踏まえ、本年度はドイツ法に関するまとめを行い、おおむね次の成果を得た。 (1)ドイツにおいて「個人データ保護の現代化」が論じられるに至った背景には、一方では電気通信技術の飛躍的発展という技術的要因と、他方では規制緩和論という政治的要因があったこと。 (2)「個人データ保護の現代化」として特に主張されたのは、データ主体の自己決定の重視、事業者による自主規制手法の活用、技術を通しての個人情報保護という観点の導入等であったこと。 (3)改革の必要性についてはコンセンサスがみられるものの、個人情報保護に好意的な論者からは非権力的手法の実効性等について疑問が提起され、事業者に好意的な論者からは規制緩和のさらなる推進が主張されていること。 (4)ここ数年、本格的改正作業が進んでいないが、それは主として政治的理由(政権交代)によること。
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