研究代表者は佐藤幸治先生(京都大学名誉教授)古稀記念論文集執筆において、二重の基準論そのものを検討し、生存権的基本権の司法審査の在り方もこの中で触れるような必要性を感じるに至った。学界の通説が、精神的自由の内容中立規制や経済的自由の消極目的規制、生存権的基本権規制などを中心に、中間審査基準(厳格な合理性の基準)を多用することに対して疑問を投げかけるものである。本稿は平成18年度中に完成され、今年度に公刊された。これは、日本公法学会での報告でも貫かれ(2009年10月に、『公法研究』に掲載予定)、この学会報告で報告しきれなかった部分は、『横浜国際経済法学』17巻2号に論説として発表した。 このほか、憲法における「教育」と「学問」の概念の違いを検討する論説を、『横浜国際経済法学』17巻3号に発表した。「大学の自治」の射程を、研究者集団の教学の自治に集中するものである。また、別冊ジュリスト『家族法判例百選』〔第7版〕(2008年10月、有斐閣)に判例研究を、『アメリカ法』[2007-2](公式刊行日は2008年3月)に米判例研究をそれぞれ執筆したが、これらは「家族」概念の再検討を含むものである(掲載誌の性格上、本研究費の成果であることは明記せず)。 平成20年度は、当該研究に必要な文献・資料の収集、及びその検討を、前年度に引き続いて行った。横浜国立大学図書館等にない図書については積極的に購入し、雑誌文献については複写請求を行った。2001-2002年度に貴会科研費奨励研究(A)・若手研究(B)「『家族』の憲法学的研究」やそれ以外の研究費によって購入した図書、個人的に所有する図書等は、十分に活用した。平成21年度には、以上の研究の集大成的な研究成果を提出したい。
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