2年計画の最終年度にあたる今年度は、前年度の資料収集および研究成果をふまえて、さらに資料収集・整理および研究・論文執筆を進めた。 前年度のリサーチで、研究課題に関わるドイツ連邦憲法裁判所の判決を分析するにあたって、前提的な理論問題を明らかにしておく必要があることが判明したので、今年度は、まず最初にその課題に取り組んだ。すなわち、現代政党国家における民主政のあるべき姿を、ドイツにおける議論や日本の学界状況などを参照しながら検討し、それを「市民的公共圏」論との関わりで精査した(「11.研究発表」記載の諸論稿を参照)。そしてその後、連邦憲法裁判所の判決を素材として、本研究課題のメインテーマである選挙候補者擁立過程の憲法学的研究に歩を進めた。 こうした一連の研究で明らかになったことは、(1)ドイツにおける候補者擁立過程に対する法的統制の議論については、政党民主政諸国に共通の側面とドイツに特有な側面とを(関連づけつつ)腑分けしながら分析する必要があること、(2)具体的には、ドイツに特有な側面として、歴史的背景事情に基づく憲法上・法律上の政党統制が候補者擁立手続に関しても存在する一方、諸国に共通の側面として、(政党の内部秩序の一般的な法的統制とは異なり)それ自体として「公共的性格」を有する選挙過程への法的統制は、特段の歴史的前提がなくても理論的に基礎づけ可能だということである。したがって、選挙過程が政党の内部手続と交錯する場面について、選挙法の観点からアプローチするドイツの特徴を参照しながら、政党の内部手続=政党の自律権=結社の自由の観点からアプローチする日本の議論を再検討し、選挙過程の民主性を--候補者擁立過程をも含めて--確保しうる理論枠組みを構築することが今後の課題となる。
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