当初の研究実施計画に則り、(1)討議民主主義や共和主義等の研究動向を調査・検討し、経済的自由主義の保障を相対化する理論の意義と問題点の検証、(2)解釈論との関係で、経済規制に関する経済法の理論を憲法学に導入する試みの是非の検討を行った。また、以上の理論的研究と併せて、(3)規制緩和政策の下で進められる改憲動向の検討を通じて、経済的自由をめぐる憲法理論の問題を実践的に検討した。 研究成果との関係で整理すると、「ジョン・ロック『自然法論』をめぐる諸考察」は、前年度の課題であったリバタリアニズムの批判的研究との関連で、ロック自然法思想の歴史的解明を試みたものである。 図書『政府規制と経済法』に掲載した拙稿「憲法と独占禁止法」は、営業の自由に関する「規制目的二分論」と新聞の特殊指定の問題を憲法と経済法のそれぞれの観点から検討し、民主主義社会においては「競争」に解消できない政治的価値があり、それを憲法論的に根拠つけていくことの重要性を明らかにした。論文「憲法からみる"独占禁止法と規制緩和"」は新聞の特殊指定の問題について、さらに立ち入って検討を加えたものである。以上の二つの論稿は、(2)の調査・分析の一部を公表しだものである。 論文「地方自治と改憲問題」は、各種の改憲案における地方自治規定が、規制緩和政策に適合的であることを明らかにし、「地方分権」が福祉切捨ての便法にされかねない状況を批判した。(3)の研究成果の一部である。 なお、(1)の課題に関わる研究成果は、「立憲主義における社会契約論の意義」と「立憲主義と民主主義の関係」といった憲法理論の基礎的問題を扱う論稿を執筆するにあたって利用した。これらの論稿は間もなく公刊される予定である。そして、現時点では未公刊の論稿をも利用しつつ、2年間の研究成果を整理して、「ポスト福祉国家における経済的自由の憲法理論的研究」と題する報告書を作成した。
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