本年度は法制度の分析と運用に関する国内実証調査研究に重点を置いた。 有事法制、国民保護法制の基本的な制度・運用に関する文献研究に重点を置き、その上で、先進的な取り組みを進めてきた自治体の運用研究と取り組んだ。具体的には、住民避難マニュアルの作成等と熱心に取り組んできた鳥取県などを対象に、既に存在する自然災害対策の運用と新規に立法された国民保護法制の運用がどのような関係にあるのか、両者の異同、担当組織関係、行政外アクターとの連携状況を解明した。 (a)武力攻撃事態の際の住民避難に対応した具体的制度設計として「住民避難マニュアル」を分析した。これは都道府県を中心とした制度連携の試みであるが、こうした消防、警察、自衛隊、地元自治体の間の協力関係の構築を国民保護法制定後の状況に重点を置きながら調査した。 (b)このほか、自治体の区域内に自衛隊やアメリカ軍の基地を抱えており、有事法制のあり方に関して、とりわけ関心の強い自治体に関しても、研究を進めた。 (c)本年度は、自然災害に関する主要法律の分析に重点を置いた。具体的には、明治30年の砂防法、昭和33年の地滑り等防止法、昭和44年の急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律、平成13年の土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の研究である。国土交通省の河川局砂防部砂防計画課でヒアリングを実施した。あわせて、自然災害に対する自治体の法システムを見直し、独自の条例を制定するなど、自治体法務をリードしてきた自治体施策を検証した。 (d)社会現象としては共通性をもつように見える災害被害と武力攻撃被害とで、どのような違いがあるのか、武力事態に関しては災害対策基本法の延長で処理していくべきなのか、類似性をもちつつもそれとは異なった法制を構想すべきなのか、などを対象に検討した。合わせて、国法がどのような自治体支援を実施できるのか、について分析した。
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