研究課題
基盤研究(C)
1.今日では、中央政府や地方政府の最も重要な任務は、市民の安心・安全を確保することである。これを望む市民の要求は、年々高まりつつあり、リスク管理を重視した様々な仕組みが存在する。このための法システムの中核を占める仕組みとして、2つのものが存在する。1つは、自然災害から市民を守り、救援するものである。これは、従前から、地方公共団体(特に市町村)を中心とした、ボトムアップの仕組みとして存在する。自然災害対策法が根拠法令である。他の一つは、武力攻撃事態から市民を守る仕組みである。これは、内閣総理大臣を中心としたトップダウンの仕組みとして構想され、都道府県知事が中心的な役割を担うものとして、都道府県中心の制度とされている。国民保護法制がこのためのものである。こうした2つの仕組みは、警察、消防、自衛隊の協力を図りながら、市町村が市民の避難の活動に当たる点で、きわめて共通した性格を有する。また、テロ活動のように、両者の共管領域とも考えられる事態も存在し、両者は判然と区別できないものである。2.しかし、現行法は、2つの法体系として構築され、対策本部等の救援組織も各法律に従って、類似するにもかかわらず、併存して設置される。こうしたシステムは、歴史的な沿革から根拠づけられるものであり、各施策の高度化、専門化を図り、両者の間で間隙を生まないためにも、統一的な法制として構成されることが必要であると考える。本研究は上記の2つのシステムを実証分析し、その上で地方公共団体の法的地位を尊重したうえで、統合的な危機管理法制を構築することを提言した基礎研究である。これまで研究が不足していた危機管理法制に関する詳細な制度設計論でもある。合わせて、国、都道府県、市町村の役割分担にも言及しており、この点では、地方自治制度の基礎研究としての性格を有する。
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