研究計画を遂行してみて、特に論点と感じられたのは、剰余金の配当と対価の柔軟化である。 会社法上、従来の有償減資は「資本の減少」+「剰余金の配当」という二つの取引に分解された。そのため、後半部分の剰余金の「配当」を、会社法が配当としているからという理由で、これまで通り税法上も配当とするのか否かが問題となる。このような問題は、有償減資に限らず、あらゆる会社法上の「剰余金の配当」を税法上どう扱うかということに関連している。 立法論としては、(1)配当とする、(2)有償減資の場合のような「純資産に基づく按分的な課税」とする、(3)資金の出所については法人の処理に任せて、それに応じて課税する(例えば、法人が資本金を取り崩し、それを剰余金の配当原資とした処理を行った場合は、課税しない等)、(4)法人に利益準備金が存する限り配当とする、といったものが考えられる。 この点につき、財務省による「平成18年度税制改正の大綱」および「所得税法等の一部を改正する等の法律案」をみる限りでは、原則として(2)が採用されるように読める。これは、会社法とは無関係に、税法独自の配当概念を作り上げることにつながる改正だと思われる。 組織再編成に関する対価の柔軟化によって、新会社法上は三角合併が可能となった。対価の柔軟化に関する会社法規定の施行は、来年の5月以降となるから、税法においても、それまでの間に課税規定を整えておく必要がある。 もし今後、税法においても、親会社株式を対価とした三角合併が適格取引として扱われるようになるのであれば、その理論的根拠が問われることになる。その際には、アメリカ法における間接的投資持分継続性(remote continuity of interest)の概念が役に立つと思われた。つまり、親会社株式を交付することで、当初の株主による間接的な投資が継続しているとして、課税繰延を認めるのである。
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