研究課題
基盤研究(C)
本研究は、納税者の権利救済という観点から、現行の不服申立制度及びその前置主義並びに不服申立審理機関である国税不服審判所の構成や役割が、違法な租税の確定又は徴収が行われた場合に、納税者それを争い、その権利利益の保護を求めることを保障する制度及び手続になっているか否かという点を明らかにしようとしたものである。本研究では、税法の領域における現行の不服申立制度を納税者の権利利益を救済するための裁判外の権利救済手続と位置づけて、不服申立前置主義とその正当化理由の問題点、不服申立審理機関である国税不服審判所の審判官の構成の問題点などを検討し、裁判外の権利救済手続及び権利救済機関として考えられる改正試案を考察した。平成17年度は、資料収集を重点的に行い、租税争訟の現状を把握し、不服申立制度とその周辺領域の関連を概観した。また、ドイツにおける裁判外の権利救済制度との比較を念頭に、ドイツ租税基本法(Abgabenordnung-1977年AO)第7編「裁判外の権利救済手続」第347条から367条までを翻訳した。平成18年度は、前年度の研究を踏まえ、わが国における現行不服申立制度に関する問題点を検討した。その内容は、不服申立制度の沿革、不服申立前置主義とその正当化理由、不服申立前置主義の問題点、不服申立審理機関としての国税不服審判所審判官の構成及び審理機関としての問題点、さらに裁判外の紛争解決システム試案として、不服申立と訴訟の選択制、国税審判官の構成、審理の公開、市民審判員の採用などの提言を試みた。なお、平成18年3月に国税不服審判所編「国税不服審判所の現状と展望」(判例タイムズ社)が出版され、又、平成18年11月には日本税理士会連合会から「国税不服審判所のあり方についての意見」が出されるなど、現行の不服申立制度について議論がなされているところである。
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吉田勇編著:法化社会と紛争解決
ページ: 100-121
YOSHIDA Isamu : Legal Society and Dispute Solution
中間報告書:社会の「法化」に最適な司法制度と紛争解決システムの構築
ページ: 15-27
An interim report : Construction of the best judicial system and dispute solution system on legal society