平成19年度における研究実績の概要は、以下の通りであった。 1. 昨年に引き続き、オーストリア2002年大学法の制度枠組みを、その改正法を含めて、同法のコンメンタールを基に詳細に検討すると共に、個々の研究論文や研究書を体系的に収集し、理論的な問題性を洗い出し、分析を加えた。 2. 本年は、オーストリア憲法裁判所の2002年大学法についての2004年の判決(一部違憲)を中心にして検討を行った。本判決は、第1に、科学・文化・経済領域から選出される者、政府・政党に属さない有識者、そして、当該大学の構成員でない者のうちから選出される5名からなる「大学管理会議」の組織の合憲性を検討し、憲法の大学制度における民主的な構成の要請が、当該大学の構成員以外から組織されることも許容することとした。また、本判決は、従来とは異なって、完全な権利能力を有する大学には、大学教育の権限を与えることができないとする主張を認めなかった。さらに本判決は、大学への予算配分の方法が大学の自治に反するとの主張を容認した。とりわけ、第1に論点は、我が国の大学自治における学長の選出方法についても重要な示唆を与えるこどになる。 3. 研究成果は熊本大学法科大学院ロージャーナルに発表の予定である。
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