1 団体の人権行使に関する研究 労働組合は、憲法28条が保障する労働基本権のうち、団体行動をする権利によって明示的に労働組合の団体としての権利が認められていると解しうる。また、宗教団体も、憲法20条が規定する信教の自由のうち、宗教的結社の自由によって、団体としての権利が保障されていると解される。さらに、総有の形態をとる入会権は、単に集団的権利の要素を多く持つのみならず、カナダにおける先住民族が集団的に有する土地に対する権原に極めて類似している。入会権も財産権の一つであるから、それは憲法29条によって保障されていると解される。このように、憲法を含めた現行法制度上、集団的権利は必ずしも排除されていないと解される。 2 集団的権利と集団的先住権 日本国憲法の下においても、一定の人権が団体によって行使され、集団的人権が承認されていると解しうることから、憲法上先住権が認められうるとすれば、集団的先住権も必ずしも憲法上排除されていないと解される。 特に、先住民族が集団的に有する土地に対する権原に類似する入会権は、わが国において認められうる集団的先住権の一つのモデルとなりうると解される。
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