本年度の研究実績は、次の3つの内容に分類される。 第1に、「フランスの裁判所における人権条約の適用」に関するフランスの憲法理論の検討。この研究に関しては、フランスの裁判所におけるヨーロッパ人権条約の適用を主たる研究素材とし、文献による研究、ならびにフランス調査において、研究テーマに関する論稿を多数書かれている、現在はヨーロッパ人権裁判所副長官のCosta判事にインタビューを行った。Costa判事は、もとフランスのコンセイユ・デタ裁判官でもあり、その経験に基づき、フランスの裁判所が破毀院や憲法院も含め、次第にヨーロッパ人権条約を適用する傾向にあり、また人権裁判所の解釈を、それぞれの裁判所の判決において参照する傾向にあるという指摘があった。その結果は、現在、論文として執筆中である。 第2に、研究テーマと、より広い部分で関連する、「国際的規範と国内裁判所の関係」について、フランス調査において、エクスマルセイユ大学法学部主催の「ヨーロッパ憲法と国内憲法」シンポジウムに参加し、条約を根拠とするEU憲法、特にそのなかの人権規定と各加盟国の憲法との関係を検討した。この問題に関しては、EU憲法の憲法としての正当性に関してすでに論稿を公刊しており(「欧州憲法条約における『憲法』概念」、法律時報増刊『憲法改正問題』(2005)、「EU憲法の法規範性」の問題と、「憲法と条約の関係」という問題との関連が今後の課題として残された。 第3に、日本における裁判所における人権条約の適用に関して検討し、日仏比較研究の一端として、次の論文として公刊した。「国際的裁判機関と国内的裁判機関-L gitimit des norms internationales relatif qux droits de l'homme dans la Constitution japonaise-」
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