本年度の研究は、前年度のフランスでの調査結果を元に、研究成果(論文)としてまとめる作業を中心に行った。発表した論文は、『講座国際人権法1国際人権法と憲法』第2部第8章「フランスの人権保障における人権条約の影響」である。この論文では、フランスの司法裁判所、行政裁判所における人権条約の適用の現状と、それをめぐる議論を検討しつつ、憲法院に与える影響も考察した。フランスの憲法理論における「国民主権論」による、人権条約の適用に関する問題点の指摘という理論状況とは別に、実際の裁判所においては人権保障という目的を優先させ、「法律に優位する法規範」としての人権条約の規範性が強まっていることが確認された。 また、当初、今年度もフランス調査を予定していたが、調査を依頼していたエクス・マルセイユ大学のThierry Renoux教授が来日されたため、日本で、「フランス憲法におけるヨーロッパ法の影響」に関するインタビューを行うことができた。そのため、旅費として予定した金額を、インタビューの仏日翻訳にあて、その結果をもとに現在、成果報告書の作成中である。
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