都市空間をめぐって様々に生じる紛争の分析と、それに応えうる訴訟制度のあり方を、あるべき行政訴訟制度の方向を、民事訴訟と行政事件訴訟の関わり、および抗告訴訟の対象等訴訟法的課題、および訴訟において争われる実体法的課題の検討を行うというのが本研究の課題である。 そのために、行政行為論、裁量論その他についての基本理論についての検討、都市空間をめぐる様々な裁判例の整理とそこで課題の析出、そして現実に発生している都市空間をめぐる紛争のヒアリング等とそこでの問題の分析が今年度のさしあたりの課題であった。 まず、都市空間をめぐる争いにおける行政裁量論についての一定の整理をして、「精華大学(中国)創立90周年記念中日行政法研究シンポジウム(2006.4.27)において、「行政裁量と司法審査」の報告を行った。 次に、都市のダウンサイジングの諸手法とそこでの争訟(典型的には、既存不適格建築物をめぐる争訟)については、日韓台行政法シンポジウム(2006.7.29)において、「都市のダウンゾーニングの法的検討」の報告を行った。ここでは、都市空間のあり方についてのルールと紛争処理において、時の要素をどういれて理論を再構成するかが重要な課題となることが改めて明らかとなった。 それを訴訟論として展開する手がかりとして、都市のルールの変化と法令適用基準時の問題を検討した。現在のところ、これは「平成17年(行コ)第92号営業許可処分取消請求控訴事件への意見書」という形にとどまっているが、現在、論文として作成中である。 その他、都市空間での紛争の一つの特徴である多数当事者間の訴訟のあり方を、さしあたり住民訴訟四号請求訴訟での訴訟参加を手がかりに検討していたが、公刊成果としてはなお、「判例解説小学校校舎損壊損害賠償行為請求事件(滋賀県豊郷町)」(判例地方自治287号)にとどまっている。 したがって、上記の報告および裁判への意見書、判例解説を展開させて論文としてまとめ、公表すること、そして、検討課題としつつなお深めることのできていない、行政訴訟と民事訴訟との関係についての論を深めることが、研究期間は終了したが、今年度の課題となる。
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