今日、日本の社会構造が「人口減少・高齢化」をはじめとした大きな転換期を迎えている中で、都市構造論として「コンパクトシティ」論がいわれるようになった。そしてこの遂行手段として、ダウンゾーニングがあるが、そこでは新たな紛争が生じてくる。 そこでは、個別のダウンゾーニングがその正当性を主張しうる法理が、ダウンゾーニングにおける行政裁量統制論として確立されなければならない。計画においては、行政裁量は他の分野とは異質のものがあるといわれ、また、それは事実であるが、しかし、その中でも、可能な限りの考慮要素および考慮の方法の明確化・豊富化によって、それはなお適切な展開を求めうるものである。 ダウンゾーニングと補償に関しては、従来から既存不適格建築物の制度として展開しているが、各類型ごとの整理が必要となる。同時に、増改築時での新法規の適用の個別的場合分け(建築の性格の場合分け、増改築の部分の場合分け、法令の性格・目的の場合分けなど)にもとづく法理の精細化が必要である。また、大きくは、区分所有共同住宅の改築・建て替えに際しての特別の困難に対応する新たな法システムの展開が必要である。 いずれにせよ、都市計画法理、さらに広くいえば行政法理に「時の要素」を入れて再構成することが必要であろう。 それは、また紛争処理のシステムにおいても、時の要素をいかに踏まえて組み立てるかという課題となって現れる。具体的には、処分の取消訴訟において認容判決(取消判決)が出され、それを受けて再処分がなされる時の、再処分の準拠法規はどの時点のものであるべきか、という問題である。従来、しばしばそれは処分時といわれてきたが、しかし、その論が依拠してきた最高裁判例はそのように位置づけることは適切ではなく、むしろ、当初処分時が基本であり、法令の性質によって再処分時もありうるという構成がより適切な結論を導くと思われる。 しかし、この問題は、行政事件訴訟法改正にともない法定化された義務付け訴訟等をも視野に入れて再構成するべきであるが、それは今後の課題とせざるをえない。
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