2006年軍隊法成立に関する論文その他を、法律雑誌その他から収集し、それらの評価踏まえながら、2006年軍隊法の全訳に取りかかる。19年度内に終えることはできなかったが、できあがった部分から、随時発表する予定である。訳が完成すれば、今後のイギリス軍事法を研究する際の、貴重な基礎資料となると考えられる。 また、軍隊一般に関する小論の執筆と、イラク戦争の適法性にも関連すると思われる、「戦争開始権限」に関する簡単な報告もおこなった。 イギリス兵によるイラク人虐殺事件(Baha Musa事件)に関しては、2007年6月に貴族院は1998年人権法にもとづき、Public Inquiryを支持する判決を下し、2008年1月に陸軍はこの事件に関するThe AitkenReportを公表し、さらに、2008年5月に国防省がこの事件に関するPublic Inquiryを実施することを宣言した。事件に関する一連の動きが最終盤を迎えている様子を、この間日々、フォローしてきた。軍法会議の判決を含んだ、こうした動き全体が、イギリス3軍にどのような影響を与えたのか、そうした中で、軍法会議、高等法院、控訴院、貴族院といった司法機関はどのような働きをし、そこでは1998年人権法がどのような効力を発揮したのか、あるいはそこにはどのような限界が生じたのか、を総合的に検討する作業が、課題として残されている。この課題を達成を通して、「司法化」の進展と今後の展開を見極めることができるであろう。
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