研究概要 |
本年度は,インターネット上での著作権侵害に関する比較法調査を進め,とりわけアメリカ合衆国及び欧州共同体の判例(特に欧州司法裁判所の関連判例)及び学説の動向について研究を行った。アメリカについては,特にインターネット上での音楽ファイル交換に関するプロバイダー及びプログラム開発者の責任をめぐる連邦最高裁判決について考察した。また,アメリカ法律協会(ALI)は,国際裁判管轄及び準拠法決定のルールを整備するための原則案(Principles)を公表している(近いうちに完成予定)。この特殊アメリカ的なアプローチによったルールについて,批判的に検討をした。 他方,欧州共同体については,国際裁判管轄及び外国判決の承認に関する2000年ブリュッセル規則及び2004年欧州債務名義規則について検討を進めたほか,契約債務の準拠法決定に関するローマI規則,そして契約外債務の準拠法決定に関するローマII規則の制定に向けた欧州委員会及び欧州理事会・欧州議会の動向について丹念にフォローアップし,特に知的財産権に関する準拠法決定ルールについてどのような議論がなされているか検討した。特にマックス・プランク無体財産法及び競争法研究所(MPI:ミュンヘン)及びマックス・プランク外国私法及び国際私法研究所(MPI:ハンブルク)は,2007年2月23日に共同で国際裁判管轄に関するブリュッセルI規則及び契約準拠法に関するローマI規則提案について知的財産権の取り扱いに関する意見書を提出しており,有益な検討材料を提供している(http://www.mpipriv.de/ww/de/pub/aktuelles/content3075.htm)。本計画研究を終了する直前であったが,このMPI提案についても検討できたのは有益であった。 さらに,研究全体と関係する論点として,国際私法固有のアプローチの検討のみならず,実質法上のソフトローの形成とそれによる紛争処理の可能性についても考察した。
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