研究概要 |
本年度は作業の最終年度ということもあり、大きく分けて、これまでの研究のまとめを含む検討と、本研究によって得られた知見に基づく今後の展望についての考察を行った。 前者については、90年代後半から出現したいわゆる「強化されたPKO」、すなわち、国連憲章第7章に基づく武力行使を許可されたPKOの特徴とその実効性を検討した。その結果、この「強化されたPKO」は、国連に要求される多様な任務-停戦監視,人道的支援、国家再建、暫定統治-の実効性を憲章第7章で図りつつ、その活動の正当性を実質的に国連システムに奪還する過程を表していることが立証された。この点については、"Legitimaization of Measures to Secure Effectiveness in UN Peacekeeping: The Role of Chapter VII of the UN Charter",in K. Wellens & T. Komori (eds.), Implementation of Rules Protecting Public Interests of International Conmmunity (Cambridge U.P., forthcoming)で公表される予定である。また国連憲章第7章の機能については、アジア国際法学会設立記念大会で、"'As if' Acting Chapter VII of the UN Charter?"と題する報告を行った。 後者については、本作業では特に地域的機関による平和活動の検討が手薄になってしまったことを反省として、今後の作業につなげる意味でも、アフリカ連合の活動が極めて興味深いスーダンの事例を取り上げ、さしあたり国連平和維持活動の活動の意義を検討し(「スーダン南北和平と国連平和維持活動-国連スーダンミッション(UNMIS)の意義-」『法学論叢』第162巻に掲載)、続稿で地域的機関と国連の関係を深く検討することにした。
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