研究概要 |
本研究では、第一に、90年代後半から出現したいわゆる「強化されたPKO」、すなわち、国連憲章第7章に基づく武力行使を許可されたPKOの特徴とその実効性を検討した。その結果、この「強化されたPKO」は、国連に要求される多様な任務-停戦監視,人道的支援、国家再建、暫定統治-の実効性を憲章第7章で図りつつ、その活動の正当性を実質的に国連システムに取り戻す過程を表していることが立証された。この検討過程を通じて、「強化されたPKO」が自衛原則に依拠していること、そして同原則が憲章第7章に基づく行動と矛盾せずに維持されていることも明らかとなった。 第二に、憲章第7章の行動として偽装された活動が最近の国連の実行に見られることからこれを検討し、憲章第7章と非第7章の区別は依然として重視されていること、さらに憲章第7章に基づく行動の発動要件はきわめて厳格に適用されているとの結論に至った。これは、2006年7月に行われた北朝鮮によるミサイル発射とそれに対する国連の加盟国の対応、そして2003年のイラク戦争に対する国連加盟国の対応から導き出されたものである。 第三に、地域的機関による平和維持活動の実施についても本研究では検討する予定であったが、総括するには至らず、スーダンにおけるアフリカ連合の活動を検討する予備的考察として、スーダンにおける国連平和維持活動の意義を明らかにした。地域的機関による活動と国連とのその関係については今後の研究課題である。
|