本年度は、以下の五つの点について検討を行った。 1.アメリカの垂直的制限に関する最近の学説の理論動向を調査した。アメリカのロー・レビュー、反トラスト法専門雑誌等に掲載された論文を調べたところ、最近、ロバート・スタイナーの垂直的制限に関する理論が再評価されている状況等を知ることができた。 2.経営学などで研究されているマーケティングに関して、関連する文献を調査した。この研究分野には、製品ライフサイクルによるマーケティングの変化に関する研究など、独禁法による規制を設計する上で有用な知見が存在することが明らかになった。 3.アメリカの流通における情報システムに関する文献調査を行った。本年度は、主として小売業について調べたが、現段階では、明確に独禁法上問題となりうるような行為や協調関係は発見されなかった。今後は、物流などにも範囲を広げて検討を行う予定である。 4.アメリカの州反トラスト法における垂直的制限規制に関する文献調査を行った。連邦の反トラスト規制と一定の対応関係があることなどが分かった。 5.我が国の独占禁止法に関する研究も並行して行った。独占禁止法の垂直的制限に係わる規定の解釈には、外国法の研究を日本法に反映させられるようにするために、解決すべき問題が幾つが存在するので、これらの点に関する研究も行った。本年度は、アメリカのロバート・スタイナーの理論を手がかりとして、我が国の再販売価格維持事件とそれに関連する事件の審決および判決を検討、整理する作業を行い、同理論により説明できる垂直的制限が我が国にも少なからず存在することを明らかにし、再販に関する独禁法の解釈等に変更が必要であるとの結論を得た。この研究については、平成18年度中に論文として公表することを目標に、現在執筆中。
|