本年度は、以下のような研究を行った。 1.アメリカの垂直的制限規制において、新しい動きがあったので、これの検討を行った。再販売価格維持について、連邦最高裁判所がLeegin事:件で新しい判断を示した。再販売価格維持は、従来、当然違法の原則によって違法性が判断されてきたが、合理の原則によって判断すべきと判示した。このLeegin事件最高裁判決について、判決の内容となった最高裁裁判官の多数派の意見と、これに反対する最高裁裁判官の意見について検討した。更に、この判決に対するアメリカの学説の反応について調べた。 アメリカの学説の反応については、Leegin事件最高裁判決を支持する意見もある一方で、強く反対の姿勢を打ち出す見解も複数存在することが分かった。最高裁判決の検討結果としては、最高裁は、再販売価格維持は基本的に競争促進的であるとする見解と反競争的なものが多いとする見解を足してにで割るような考え方を採用しているとろに問題があると考えられる。 2.我が国の情報技術を用いた流通機構について検討した。情報技術を応用した仕組みとしては、電子受発注システム(EOS)、エレクトリック・データ・エクスチェンジ(EDI)、サプライ・チェーン・マネージメントを具体化した自動連続補充システムなどがある。我が国では、1970年代から徐々に導入が進み、仕組みも複雑化している。また、このような流通機構が競争に与える影響について、我が国でいかなる議論がなされているか整理した。 3.研究のまとめを行った。アメリカの垂直的制限規制とEUの垂直的制限規制について、それぞれ再検討を行った。これらに我が国の流通情報システムの状況と、これに関する競争制限効果の議論を合わせて検討し、一定の結論を得た。
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