1.米国の反トラスト法に関する研究 まず、流通情報システムの利用状況等について文献調査などを行った。平成19年の6月になって、垂直的価格制限のうち、再販売価格維持については、違法性物断基準が変更された。Leegin事件の最高裁判決によって、従来の当然違法の原則から合理の原則によって違法性が判断されることとなり、違法となる範囲が狭まる可能性が大きくなった。そこで、この最高裁料決に対する学説の反応について調べ、同判決の垂直的制限規制への影響について検討を行った。 2.EUの競争法に関する研究 垂直的制限ガイドライン作成の準備作業であるグリーンペーパーやガイドラインの作成前後から最近までの垂直的制限に関する論文などを検討した。その結果、当初予想していた、製造業者と流通業者が流通の効率化等を目指して情報システムを構築し、密度の濃い情報交換を日常的に行うことにより生ずる拘束関係の他にも、競争上の問題が生じうることが明らかになった。 3.日本の独占禁止法に関する研究 まず、再販売価格維持規制の解釈、運用上の問題について研究を行った。審決等の分析から、再販売価格維持には、垂直的な協調関係にある事例が少なからず存在することを明らかにし、このような実態を意識した法の解釈と運用が必要であるとの結論に至った。また、情報技術を用いた流通機構について、EOS、EDIなどの仕組みについて調べた。更に、このような流通機構が競争に与える影響に関する学説について検討した。 4.総合的検討 アメリカとEUの垂直的制限規制も含めて、総合的な検討を行った結果、流通情報システムを利用することは、再販売価格維持については、基本的に競争阻害効果を正当化するものではないが、垂直的非価格制限については、競争促進効果を慎重に検討する必要があると考えるに至った。
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