2年間にわたる文献研究および現地韓国における調査の結果、本研究テーマについて得られた成果は以下の通りである。 まず第一に韓国社会保障制度、今回は中でも所得保障制度に重点をおいて検討したところ、時間的な制約によりまだ十分に成熟していないこと、予算配分のあり方等により公的制度だけでは救済することの困難な生活困窮者が少なからず存在していることが明らかになった。 第二にそのような存在を看過できないとして民間団体、すなわち公益法人、宗教団体、NPO法人および企業体が募金を募りあるいは自ら寄付をして経済的な支援を実践しているところであるが、その態様が組織的・体系的であって、行政機関のこれらに対する期待が大きいことが判明した。 第三にこれら民間団体の活動のうち、わが国と比べた場合、救貧事業が多く、本来であれば国の公的扶助制度によるところを民間団体が国や地方公共団体の代替機能を果たしている部分が相当程度あることが理解された。また、そのための財源確保策として国民一般に広く募金や寄付を呼びかける工夫も凝らされ、募金者らの拡大および定期的・継続的支援の確立が研究・促進されていることもわかった。 但しこれら民間組織によって行われる事業は、普遍性・恒久性が確保されているとは言いがたく、そのときの経済・社会状況によっては支援が中断・断絶される可能性も否定しがたい。官民がどのように協同して、この事業を発展させていくかが課題である。
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