平成17年度においては、リフォーム詐欺など、消費者を欺瞞する取引行為の実態を把握するとともに、こうした欺瞞的な消費者取引行為に対する現行の日本の法制度の問題点について検討を行った。平成17年度の最も大きな事件であるリフォーム詐欺については、シロアリ駆除、ふとん販売、消化器や浄水器の販売、教材販売といったこれまでの訪問販売における一連の悪質商法が巧妙化してきた結果、発生したものととらえることができ、これまでの欺瞞的な取引行為が巧妙化する中で高額な消費者被害が発生したととらえることができる。この巧妙化は、(1)高齢者などの弱者を狙い打ちにし、(2)押し売り的要素を表面的に抑え、親切さを装い(3)クレジットを利用した高額の契約に持ち込むという形をとっている。現行法制度は、こうした手口の巧妙化に対応しておらず、規制の強化など、抜本的な改善を要すると見られる。アメリカ合衆国では、連邦取引委員会が行政の中心となって、単に欺瞞的な行為の差止めのみならず、積極的に消費者被害の回復のための取組みを展開し、大きな成果を上げている。EUにおいても、昨年5月、加盟各国に不公正な商業行為全般を効果的に取り締まる法制度の整備を求める指令が出され、消費者法制がさらに強化されようとしている。その意味でも、日本の消費者法制度の強化は喫緊の課題といえよう。 また、こうした法制度の強化だけでなく、高齢者などに対する欺瞞的な取引行為を防止するためには、地域社会における効果的な取り組みも必要であり、福祉の専門家のみならず、消費生活相談員など消費生活の専門家も地域社会に密着した活動を展開していけるような環境を整備し、地域の行政が連携・支援していくことも重要であると考えられた。
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