本研究は、労働契約法の理論研究を行い、労働契約法の立法化について試論を展開しようとする目的をもって取り組まれた。まず理論研究として、労働者概念と使用者概念の解明、労働契約の法的性格の分析等を行った後に、平等権を中心に権利義務論を検討するとの実施計画を立てて遂行した。 研究の成果としては、(1)労働法の再編の分析と今後の課題の提示、(2)労働契約法の検討、(3)雇用の多様化と平等権、(4)雇用平等に関するものを上げることができた。(1)は、当初の計画にはなかったテーマであるが、本研究を遂行する上で避けて通れない基礎研究であるとの認識にいたり、急遽研究計画の中に組み込んで行ったものである。1990年代以降の労働法の再編過程をフォローすると同時に、再編の課題と方向性を明らかにした。(2)については、立法化に向けた提案を行うと同時に、法律が制定されて後にはその解釈問題について研究を行った。重点は、労働者概念、使用者の概念、労働契約法の概念である。(3)については、2007年に法改正が行われたパート労働法の検討を行い、法改正の意義と課題を明らかにした。(4)については、コース制という雇用差別の適法性に関する研究を行った。 本研究では、労働契約の理論構造に関する分析が若干弱かったが、その他についてはほぼ予定通りに研究が遂行され、十分な成果が得られたと考えている。
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