本研究は、雇用・労働分野における専門家の育成および活用に関して、文献調査・実態調査・比較法研究を行ったものである。本研究の具体的な成果として、下記の8点を指摘できる。 (1)雇用・労働分野における代表的な専門家である社会保険労務士に対して、全国社会保険労務士会連合会の協力を得てアンケート調査を行い、社会保険労務士の活動の実態、実務における専門家としての役割の内容を明らかにした。 (2)社会保険労務士以外に、雇用・労働に関する専門家として実務的に活動している者の専門家としての機能、現状と問題点を、ヒアリング調査等によって明らかにした。 (3)雇用・労働に関する専門的知識・判断能力に関する教育のあり方について、(1)の成果に基づいて、検討を行った。 (4)いわゆる現行社会保険労務士に関する法制度について、改正の経緯を含めて、立法過程の研究を行い、法制度の課題を明らかにした、 (5)韓国の社会保険労務士である公認労務士に対して、韓国公認労務士協会ならびに韓国外国語大学の協力を得てアンケート調査を行い、公認労務士の実態を初めて明らかにした。 (6)社会保険労務士に求められる役割に応えられるような試験制度の改革、その後の教育システムのあり方(特に高等教育との連携)、法的紛争手続への関与(司法書士等との比較)等について検討を行った。 (7)労働契約法が展開しつつある中国において、労働紛争への専門家の関与について明らかにした。 (8)雇用・労働分野における専門家の育成・活用について、法制度的として関与すべき点について全体的な視野からの提言を行うとともに、彼らに必要なリーガルリテラシーについて考察を行った。 本研究の公表は、平成18年12月に行った、青山学院大学大学院法学研究科ビジネス法務専攻=全国社会保険労務士会連合会共催の「社会保険労務士の将来」で行われ、さらに、平成19年7月に韓国外国語大学で行う予定である全国社会保険労務士会連合会=韓国公認労務士協会共催の「人事労務分野における専門家の可能性〜社会保険労務士制度・公認労務士制度の比較を通じて」というシンポジウムで行われる予定である。
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