研究概要 |
研究初年度である17年度は,基礎的な作業としてまず研究課題に関連する先行研究の収集及び検討を行った。また,国内における障害をもつ人の雇用・就労支援法制について検討を行った。これらは論文「障害者雇用促進法における障害をもつ人の就労支援制度」にまとめ,富山商船高等専門学校研究集録第39号に掲載した。 研究2年目に当たる18年度は,外国の障害をもつ人の雇用・就労制度と当事者への公的支援制度のあり方について,特にイギリスに焦点を当てて文献の収集や現行制度の調査並びに検討等を行った。イギリスは日本と同様に割当雇用制度をとっていたが,1995年に障害者差別禁止法(Disability Discrimination Act 1995)の制定により割当雇用制度を廃止するという法制の大きな転換を行った。そのような状況下で障害をもつ人の雇用・就労支援がどのように行われているのかを調査した。これらの検討結果は論文「イギリスにおける障害をもつ人の雇用・就労支援制度」(富山商船高等専門学校研究集録第40号)にまとめ公刊した。 本研究の最終年度である19年度は,これまでの国内研究と外国研究に加え,国連やILOから出された条約・勧告等における障害をもつ人の雇用に関する条項を確認し,その到達点について検討した。障害者権利条約に見られるように,国際的な基準・指針として,障害をもつ人の雇用・就労における「差別禁止」,「合理的配慮」,「積極的差別是正措置」のための施策の展開が求められている段階にきており,障害をもつ当事者への雇用・就労支援は今後重要な課題となることが確認できた。国連やILOは,事業主に対して合理的配慮(障害をもつ人への雇用・就労支援を含む)を行うよう要請しており,また政府当局に対してはその合理的配慮が行われるように様々な措置をとることを要請している。これらの検討結果は論文「国際人権法と障害のある人の雇用」にまとめ,富山商船高等専門学校研究集録第41号に掲載する。また,3年間の研究をまとめ,研究成果報告書を作成した。報告書では,日本の障害をもつ人の雇用・就労支援法制の沿革と特質,イギリスの障害をもつ人の雇用・就労支援制度,国際人権法から見た日本の障害をもつ人の雇用・就労支援法制の課題等について調査・検討したものをまとめた。
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