平成19年度は、平成18年度から予定していた最後のフランス現地調査が、代表者の体調不良により中止を余儀なくされたため、平成17年度及び平成18年度に行った計4回のフランス現地調査において収集した資料の解読・整理を継続すると共に、その際購入した膨大なフランス語文献の購読・研究を日本で行った。 その結果、1992年のフランス生命倫理法をさらに拡充した2004年改正の全体像が次第に明らかとなり、その先進性が改めて明確となったので、その研究成果の一部を「フランス刑法の最新動向と日本法への示唆」と題するジュリスト掲載論文において公表することができた。この内容は、フランス生命倫理法に限定されないが、一般にフランス刑法の全体像が日本に紹介されることが少ないため、学界から概ね好意的な反応を得た。 さらなるフランス語資料の整理に時間がかかっていたが、ようやく年度末に、本格的な学術論文として、「安楽死・尊厳死をめぐる日仏の法的対応について」という論文を阪大法学に連載開始することができた。連載はさらに続く予定であるが、日本でも近年富山県射水市市民病院における延命治療中止事件などが起きて注目されている安楽死・尊厳死問題に関するフランス法の対応を詳細に論じた論文は少ないため、注目を集めることができるのではないかと期待している。
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