研究課題
基盤研究(C)
現代の医学・研究等の発達により、体外受精、代理母、臓器移植、クローン人間開発等、従来の法体系が予想しない様々な現象が生じ、わが国の関連法整備は急務であるが、1994年に憲法、民法、刑法的観点から総合的に検討された包括的な「生命倫理法」を公布したフランスにおける刑法分野の適用実態と医療現場等での犯罪防止対策について調査・研究し、わが国の将来的な立法ないし逸脱行為予防システム構築のための参考に供することが、本研究の目的であった。しかし、フランスの司法統計・警察統上、生命倫理関連犯罪適用数は計上されておらず、判例集も調べた結果、搭載された判例はなかった。パリ大審裁判所に問い合わせたが、正確な事件数は統計が存在しないためわからず、医療現場での調査も、医療関係者の多忙とプライバシー保護の関係から断られ、結果的にフランス生命倫理関連犯罪の適用実態の詳細は明らかとはならなかった。しかしながら、フランスでは、2004年に生命倫理法の大幅な改正が行われ、先端医療丁という行政機関も創設されてさらに精緻なものとなったため、わが国の医学研究・医療現場での逸脱行為防止のための法制度整備に参考となる有益な情報を多数入手することができた。折しも、国内の病院で延命措置中止事件、臓器売買事件、祖母による代理出産事件等が報道され、厚生労働省の延命治療中止をめぐるガイドラインが公表されたものの、他の問題への対応も含め、法整備は立ち遅れたままである。そこで、研究成果としてフランスの2005年尊厳死法の紹介を中心とした論文を発表し、生体移植に関する論文もまとめているが、たとえば生殖補助医療分野でも参考となる法律は多いため、今後もさらに研究成果をわが国に発信してゆくことが重要で、その意義は大きいと思われる。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (6件)
ジュリスト 1348号
ページ: 162-171
阪大法学 57・6
ページ: 25-53
阪大法学 58・3
ページ: 2-20
Jurist no. 1348
Osaka University Law Review vol. 57, no. 6
Osaka University Law Review vol. 58, no. 3
ページ: 3-20