本年度は、特に低年齢非行少年(tender year juvenile delinquent)のアメリカ合衆国における扱いを調査するための準備と実際の調査活動を中心に行った。 本研究の目的が、基本的に、刑事責任年齢に達しない非行少年(=「犯罪」少年)の法的扱いのあるべきあり方を検討するものであるので、まずわが国の少年法の母国でもあるアメリカの状況を参考にすることにした。具体的には、(1)刑事未成年の非行少年の扱いはどの機関が管轄権をもつのか、(2)同少年に対して警察は調査権限を有するのか、(3)弁護人は特別の弁護士が担うのか、(4)審判(あるいは聴聞)における特別の扱いとしてどのようなものがあるか、(5)選択される処分にはどのようなものがあるか、(6)収容される施設ではどのような処遇がおこなわれているのか、等の項目について質問票を作成して、アメリカ東部(ペンシルバニア州、バージニア州)、アメリカ西部(カリフォルニア州、ネバダ州、ユタ州)、アメリカ南部(ジョージア州、フロリダ州)、アメリカ北部(ミネソタ州、イリノイ州)の各少年司法専門家にアンケート調査を行った。現在、その内容を分析中である。 また、平成17年7月には、ユタ州ソルトレイクシティーを訪問して、少年裁判所、少年拘置施設(ソルトレイク・ディテンションセンター)、少年院(ワサッチ・ユースセンター)等の少年司法関連施設を調査した。ユタ州では、原則として10歳未満の少年については刑事責任を問わないことになっているので、例え9歳の少年が重罪を犯したとしても社会福祉機関で扱われることになる。もっとも、捜査(調査)段階において警察が一定の捜査活動を行うことは許容される(警察の権限はすべての年齢の子どもにおよぶことになっている)。したがって逮捕も可能と言うことになる。いずれにしても、10歳未満の場合は、原則として社会福祉機関で事実調査等が行われて、児童福祉施設収容等各種の処分が選択されて執行されることになる(この点についてはわが国の児童相談所が行う措置を変わりがない)。もっとも、コモンローが優先して、少年裁判所に送致され、少年法上の処分を受けるみちも残されている。なお、10歳以上の場合は、刑事責任が問えることになるので、少年法上の処分選択(ワサッチユースセンター収容)が可能となる、場合によっては、刑事裁判所に移送して刑罰を科すことも可能である(その場合には、成人刑務所に収容される)。 以上、本年度は主として、低年齢非行少年の扱いについてのアメリカの状況を主として調査することに焦点を絞って研究を行った。
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