本年度も昨年度同様に、特に低年齢非行少年(tender year juvenile delinquent)のアメリカ合衆国における扱いを調査するための準備と実際の調査活動を中心に行った。 本研究の目的が、基本的に、刑事責任年齢に達しない非行少年(=「犯罪」少年)の法的扱いのあるべきあり方を検討するものであるので、まずわが国の少年法の母国でもあるアメリカの状況を参考にすることにした。具体的には、(1)刑事未成年の非行少年の扱いはどの機関が管轄権をもつのか、(2)同少年に対して警察は調査権限を有するのか、(3)弁護人は特別の弁護士が担うのか、(4)審判(あるいは聴聞)における特別の扱いとしてどのようなものがあるか、(5)選択される処分にはどのようなものがあるか、(6)収容される施設ではどのような処遇がおこなわれているのか、等の項目について質問票を作成して、アメリカ東部(ペンシルバニア州、バージニア州)、アメリカ西部(カリフォルニア州、ネバダ州、ユタ州)、アメリカ南部(ジョージア州、フロリダ州)、アメリカ北部(ミネソタ州、イリノイ州)の各少年司法専門家に昨年度に引き続いてアンケート調査を行った。現在、その内容を分析中である。 また、平成18年8月には、カリフォルニア州サンフランシスコ市、ロサンジェルス市を訪問して、少年裁判所、少年拘置施設(Juvenile Hall)、少年院等の少年司法関連施設を調査した。カリフォルニア州では、少年についての刑事責任は特に明文をもって規定していない。したがって、例えば、9歳の少年が重罪を犯した場合であれば、少年裁判所が管轄権を有することになり、少年院に送致することが可能である。もちろん、捜査(調査)段階において警察が一定の捜査活動を行うことは許容される(警察の権限はすべての年齢の子どもにおよぶことになっている)し、逮捕も可能である。なお、14歳以上の場合は、刑事裁判所に移送して公開の刑事裁判に付すことが可能になっている。有罪となれば、成人刑務所に収容されることになる。 以上、本年度は主として、低年齢非行少年の扱いについてのアメリカの状況、特にカリフォルニア州を主として調査することに焦点を絞って研究を行った。
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