これまでの薬物依存に関する治療共同体や米国のドラッグ・コートの調査研究を通じて、日本においても、大胆なダイバージョン・プログラムを導入する必要があることを確信した。その前提として、依存症者自身が回復の主体であること、その支援は非政府組織や地域社会を中心に行われるべきこと、そして、再使用は回復のためのステップであることについて、司法、医療および福祉の関係者が前提理解を共有することが必要であるとの結論に達した。そこで、2006年度には、これまでの調査研究の中間成果を発表することに活動エネルギーを傾注した。 上記の研究計画を実行するために9回の研究会を開催し、『日本版ドラッグ・コート〜処罰から治療へ〜』を刊行した。また、第33回日本犯罪社会学会(2006年10月、中央大学)においてはラウンドテーブル・ディスカッション「薬物依存症者処遇の科学性〜ドラッグ・コート導入の可能性〜」をオルガナイズした。日本刑法学会関西部会(2007年1月、京大会館)においては共同研究報告「薬物依存症者に対する処遇効果の評価について〜日本版ドラッグ・コートの可能性〜」を行った。 現在、刑事施設の過剰収容に対応するため「収容人員の適正化」と更生保護の全面的見直しに関する検討が進められており、社会内処遇に関する法改正が国会に上程されている。このような状況下にあって、米国のドラッグ・コートの経験に注目が集まっている。 最終年度には、すでに公刊した提案書に対する意見と批判を聴取し、提案をより具体化し、理論の精緻化を図る予定である。
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