研究課題
基盤研究(C)
本研究は、時効制度の機能を分析し、時効の諸問題の解釈への影響の有無、影響すべきときはその具体的な内容を検討しようとするものである。時効制度の機能としては、(1)証拠保存解放機能、(2)義務解放機能、(3)権利行使促進機能、(4)裁判所の負担軽減機能、(5)提訴抑止機能、(6)判決迅速化機能が挙げられる。(2)と(3)は表裏の関係にあり、(5)と(6)は(4)の具体的な内容といえる。これらの機能が適切に働くためには、たとえば、消滅時効の起算点は、(2)の機能からは、客観的であることが望ましいが、(3)の機能からは、債権者が債権の存在を認識した時点というように、主観的であることがのぞましい。したがって、解釈論としては、権利行使が期待できる時となる。また、立法論としては、主観的な起算点と客観的な起算点からなる二重期間を設けることが考えられる。消滅時効期間の長さについては、(1)の機能からは短い方がよいが、(2)の機能が強いときは権利者の不利益が大きい。このように、時効制度にのぞましい機能を持たせるには、時効の起算点、時効期間、時効の中断、時効の停止、時効の援用、合意と時効などの個別の制度の解釈と連動する必要がある。さらには、時効期間、時効完成の要件の立証責任の分配のあり方にも関係する。それは、立法論に連なるものであり、現在、日本において民法改正作業が進められている状況のもとでは、これらの諸機能とそれに基づく解釈論を分析視角に置きつつ、比較法をも視野に収めた総合的な研究が必要である。本研究は、そのための基礎作業としての意義を有するものである。
すべて 2007 2006 2005
すべて 雑誌論文 (6件) 図書 (2件)
椿寿夫編・三林宏編『権利消滅規定の研究』(信山社)
ページ: 243-261
Tsubaki, Toshio, et al., Research on the Limitation of Action, Shinzansha
民事執行・保全判例百選(別冊ジュリスト) 177号
ページ: 246-247
江原法学(韓国) 21
ページ: 79-101
Bessatsu Jurist No.177
Kangwon Law Review Vol.21