研究概要 |
平成17年度末(3月19日〜3月30日)に行なった英国のFSA、ロンドン・アクチュアリー会および独逸アクチュアリー会での実地調査、ヒヤリング、資料収集等の整理・分析を行なった。同時に、両国の監督法関連の文献資料等を通じて、法的観点から保険アクチュアリー制度の基本的・体系的理解に努め、最近の動向を把握した。 英国では2000年のエクイタブルの破綻後アクチュアリー制度の抜本改革が行なわれ、従来のアポインテッド・アクチュアリー制度を廃止し、それが担っていた業務をファンクション・ホルダーと有配当アクチュアリーに分担させ、後者と取締役の兼任を禁止して有配当アクチュアリーの職務の独立性を高める等、有配当保険契約者の保護を強化した。とくに重要なのは、バランスシートに対する経営陣(取締役会)の責任を強化した点である。これら新制度への移行は2004年末から行われているが、現在のところうまく機能している(FSAのイアン・ピケルング氏)。今回のアクチュアリー制度改革はFSAの主導で行なわれたが、新制度はすべての保険会社で導入済みであり、非常にうまく機能しており、とくに従来アクチュアリーだけが責任を負っていた分野(配当の決定等)につき経営者(取締役会)が責任を負うこととなったため、経営陣が経営判断に必要な知識を得るよう努力するようになり、ガバナンスの構造として好ましいものとなった(英国アクチュアリー会長ニック・ダンブレック氏)。 独逸では、独逸アクチュアリー会,監督当局、保険会社が緊密に連携しており、現在の課題は国際会計基準やソルベンシーII (EU規制)への対応が大きなテーマであるが、損保業界におけるアクチュアリー業務の拡大も重要な課題であり、社会におけるアクチュアリーの認知度を高め、政治的にも影響力を高めることがアクチュアリーの独立性を高めるために必要であると考えている(独逸アクチュアリー会元会長マーチン・バリール氏)。
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