現在ヨーロッパではEC加盟国を中心にして憲法、民法、消費者法、商法など基本的な実定法の統一化作業が進められている。本研究では、その中の民法、特に、統一化作業が最も進んでいる債務法、契約法を採り上げて、その作業の進捗状況、すでに出来上がった法律案の概略と法文、制定作業において問題になっている様々な論点を摂取、素描し、法制過程とその成果を明らかにすることを目的とした。またEC加盟国の中心的存在であるドイツでは、すでに2001年に新債務法が制定され、現在までに数多くの論文、文献判例が公刊されているが、本研究は、これらのドイツ新債務法制定後のドイツの法発展をフォローすることもまた対象に加えた。これらの債務法の様々な論点に関する比較研究は、現在わが国で進められている債務法の現代化作業の不可欠の前提となると考えられる。2年間の研究期間中関連文献を数多く収集するとともに、ドイツなどの何人かのこれら法統一作業を行っている人々とコンタクトをとり、資料、情報の提供を受ける体制を整えることができた。研究成果としては、この期間、ユニドロワの作成したフランチャイザーに課されるフランチャイジー希望者に対する情報提供に関するガイドラインの邦訳、紹介と日本の現状との比較研究、2001年9月に開催されたヨーロッパ債務法の主要論点に関するシンポジウムの報告の邦訳および日本民法上の議論との比較検討、弁護士報酬敗訴者負担原則の比較研究、ヨーロッパ民法草案の現在における法文の邦訳を刊行または上梓することができたにとどまるが、ドイツ新債務法制定後の判例、学説の展開およびその日本民法への影響、ヨーロッパにおける法統一の方法論に関する学問的検討などについては、近日中に成果が刊行される予定である。
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