研究概要 |
3年の研究期間の中間年度(2年目)に当たる平成18年度においては,不動産実体法・手続法のそれぞれにつき,以下のような研究を行った。 (1)不動産実体法 民法177条の対抗要件主義をめぐる論点の中でも難問の1つである「賃貸人たる地位の移転と登記」の問題に関して,前提となる賃貸人たる地位の移転の法律構成をめぐる諸学説-「状態債務関係」論・「賃借権の物権化」論・「法定債務引受」論-を,フランス法・ドイツ法にさかのぼって考察した。 (2)不動産手続法 一方,不動産手続法(登記法)に関しては,以下の5分野((1)(2)(3)(4)(5))に関する研究を行った。 (1)電子申請-新不動産登記法の導入したオンラインによる登記申請手続の目的が見失われている現状について分析するとともに,低迷する利用率の向上策について検討を行った。 (2)登記識別情報-平成17年夏に発見された登記識別情報の不具合の問題について,緊急の検討を行った。 (3)中間省略登記-新不動産登記法の下において事実上申請が困難となった中間省略登記を,とくに中間省略相続登記に焦点を当てて検討を加えた。 (4)地籍・地図整備・筆界特定-国土調査法に基づく地籍整備ならびに不動産登記法14条1項地図の整備,地図情報システムの構築状況,筆界特定制度の現状と課題につき検討・報告を行った。 (5)専門資格者の業務-新不動産登記法の制定・改正に伴う不動産登記申請の資格者代理人(司法書士・土地家屋調査士)の業務内容の変化につき検討を加えた。 (3)現在進行中の研究 (1)前年度より継続中の『条解(新)不動産登記法』(弘文堂)の編集作業については,現在,学者側の原稿提出がほぼ完了し,実務家側のチェックが入っている状況にある。また,(2)新たな企画として,専門訴訟講座第6巻『不動産登記訴訟』の編集作業を開始した。さらに,(3)実務家との共同研究として,平成19年6月8日には土地家屋調査士協会シンポジウム(公共嘱託登記をテーマとする),7月21日には司法書士協会シンポジウム(司法書士倫理ならびにABLをテーマとする)を予定している。なお,(4)前年度より継続中の,物権法教科書(新世社)の執筆についても,本年度中の刊行を予定している。
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