研究概要 |
本研究は,不動産物権変動に関する実体法(民法)と手続法(不動産登記法)に関する法理論と判例・実務の現在の到達点を分析し,今後のあるべき方向性を模索するものである。 (1)不動産実体法 不動産実体法領域に関しては,民法177条の「物権の得喪及び変更〔物権変動〕」要件,「第三者」要件についてそれぞれ検討を加えたほか,対抗要件主義をめぐる論点の中でも難問の1つである「賃貸人たる地位の移転と登記」の問題に関して,前提となる賃貸人たる地位の移転の法律構成をめぐる諸学説-「状態債務関係」論・「賃借権の物権化」論・「法定債務引受」論-を,フランス法・ドイツ法にさかのぼって考察した。 (2)不動産手続法 不動産手続法領域に関しては,平成16年新不動産登記法制定,平成17年新法改正,平成18年法人法改正と不動産登記令・規則改正に焦点を当てて,(1)電子申請と登記識別情報,(2)登記原因証明情報と中間省略登記,(3)地籍・地図整備,(4)筆界特定と土地家屋調査士ADR,(5)専門資格者(司法書士・土地家屋調査士)の業務内容の変化(司法書士に関しては,簡裁代理権に基づく債務整理業務に代わる新規業務の開拓可能性,土地家屋調査士に関しては,民間紛争解決手続代理関係業務の展開可能性と,一般法人法・公益法人認定法の施行に伴う公共嘱託登記土地家屋調査士協会の移行手続等)の諸点に関する検討を行った。 なお,いずれの研究成果に関しても,論文にてこれを発表し,あるいは学会発表を行っており,また,その成果は,国会審議や,自由民主党政務調査会司法制度調査会審議の質疑資料として利用されている。
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