本年度は、弁護士費用敗訴者負担に関して、以下の関連分野について理論的な考察を行った。 交通事故に関して、裁判手続と財団法人交通事故紛争処理センター、財団法人日弁連交通事故相談センターなどの裁判外紛争処理手続を比較して、裁判に敗訴すれば、裁判費用及び弁護士費用を敗訴者が負担するリスクを勘案して、保険会社及び弁護士が交通事故をめぐる紛争の解決手段として、裁判を選択するのかあるいは、裁判外紛争処理手続を選択するのかを理論的に考察した。 イギリスにおいては弁護士費用敗訴者負担を原則としながら、弁護士あるいは当事者の訴訟活動を勘案して、裁判所が勝訴した当事者に対しても、サンクションを課す場合が近年増加しており、判例を分析して検討した。あわせて、当事者間で和解が成立した場合にもどのように弁護士費用を当事者間で負担するのかについても検討した。 弁護士費用を十分な資力がないために、負担できない当事者に対して、資金を貸与する制度として、法律扶助の制度があるが、どのようにして発展していったのか、弁護士費用についての勝訴した場合にしか依頼人に請求しない成功報酬制度と法律扶助を考察することによって、弁護士がどのような紛争解決手段を選択するのか、当事者と弁護士との間に勝訴した場合の経済的利益をめぐって、相互に利益相反が生じないか、生ずるとすればどのように対応すべきかなどを検討している。
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